上映会:寝屋子 -海から生まれた家族-

伊勢湾口に浮かぶ島、答志島(とうしじま)。この記録フィルムは、この島の答志集落に伝えられている日本で唯一の伝統的若者宿の制度(ここでは「寝屋子(ねやこ)」とよぶ)を、1980年3月から1994年秋までの14年余をかけて記録し、それをまとめたものである。

伝統的な若者宿は、かつて日本の各地でみられる制度であった。しかし第二次世界大戦後、特に1960年代に急速に消滅していった。答志の寝屋子は、その激動する時代をくぐりぬけて生き続けている唯一のものである。 答志は、海に依存し、漁業に生きる町である。
なぜこの地に、伝統的若者宿の制度が、生き続けているのであろうか。

答志では、中学校を卒業した男子は、数人単位のグループをつくり、寝屋親を選び、自分たちの宿を引き受けてくれるように頼んでもらう。そして10数年、起居をともにする共同生活をし、最初の結婚者が出るとそれを機にその寝屋子組は解散する。

血気盛んな時期の共同生活である。実の兄弟以上に強い人間的結びつきが寝屋子たちに生まれ、また寝屋親とは実の親とはまた違った強い結びつきが生まれる。そしてそれは生涯変わることはない。

寝屋親には、たいてい30歳代後半から40歳代前半の人がなる。自分の両親や子どもがいる。子どもはまだ小さい。さらにそこに数人の他人の子どもを引き受けなければならないのである。

「ここが漁業で生き続けるかぎり寝屋子はなくならない」と、この記録で追い続けた、通称「辰吉寝屋子」の寝屋親、山下正弥さんは言った。「わしらは漁師。海の仕事には危険がつきまとう。助け合わなければならない。寝屋子はその助け合いの制度だ」そうも言った。この記録は、辰吉寝屋子14年の記録でもある。
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