上映会:イヨマンテ -熊おくり-

イヨマンテとはイ(それを)・オマンテ(返す)という意味で、熊の魂を神の国へ送り返すまつりをいう。アイヌ民族にとって、熊は重要な狩猟対象であるとともに神であり、親しみと畏敬の対象であった。熊は神の国から、毛皮の着物を着、肉の食べ物を背負い、胆(い)という万病の薬を持って、アイヌつまり人間の世界へ来てくれる。
そのお礼に人間界のお土産を持たせ、また来てくださいと送り返すのだとアイヌは言う。

1977年3月上旬、このイヨマンテは行われた。指導にあたったのは二風谷アイヌ民族資料館の萱野茂さん。
「本物のイヨマンテを覚えておきたい」というアイヌの青年たちの熱意に支えられて、まつりは実現した。
準備。山から材料の木や草を集めて、祭祀道具を作る。酒やまつりの食べ物を作る。

イヨマンテが始まる。熊は檻から出され、ヌササン(祭壇)の前に連れていかれる。花矢が次々に射られ、最後に矢が射られる。その前でニヌムッチャリ(クルミと干魚を撒く)をする。アイヌの村は豊かで楽しい所だと神の国に言づけてもらいたいという願いが込められている。またアイヌペウレプ(人が熊の役をして遊ぶ)や網引きをして、豊猟を祈る。

ヌササンの前で熊の解体。肉は作法に従いカムシケニ(肉を背負う木)にかけられる。次いで、魂が宿っているとされるオルシクルマラプト(毛皮をつけた頭)をチセ(家)に招じ入れ、火の神との対面をする。そして夜を徹しての宴。

2日目深夜、ウンメンケ(頭の化粧)。鼻先と耳の毛だけを残して熊の頭から毛皮が取られ、目、下、脳も取り除かれる。そしてイナウキケ(木の削りかけを使った祭具)や麹、笹で美しく飾る。その頭骨をユクサパウンニ(熊の頭をのせる木)にのせ、カムイシンタ(神の乗り物)をつけ、性器をつるし、祭主のしるしをつけたパスィ(へら)をつるし、着物を着せ、土産を持たせる。そして3日目早朝、ケオマンテ(なきがら送り)の儀式が行われる。 イヨマンテは、アイヌの自然観、生命観が凝縮したまつりである。生命体である人間と他の生命体である動物との対峙。そこには人間の信仰、文化の原初への啓示がある。
Close